AI時代の今だからこそ理解する「マークアップ」の本質。HTMLを書くことは、情報の「骨組み」を定義すること

「マークアップ」とは何か?
私たちが普段使っている「マークアップ(Markup)」という言葉。その語源は、紙の原稿の余白に、印刷の指示や文字の大きさなどを記号(マーク)で書き込んだことにあります。
WebにおけるHTMLも全く同じです。
単なるテキストデータに対して、「ここからここまでが見出しである」「これはリストである」といった「意味」や「役割」を付与していく作業。それがマークアップです。
つまり、HTMLを書くことは、単にデザインを再現することではなく、情報の文脈(コンテキスト)を定義することに他なりません。
2. 構造化の具体例:ただの「文字の塊」を「情報」に変える
例えば、製品紹介の原稿をHTML化する場合を考えてみましょう。見た目だけを整えるなら、すべてを p タグ(段落)で囲って、CSSで装飾すれば事足ります。しかし、それはマークアップとは呼びません。
構造を無視したマークアップ(機械にはフラットに見える)
<p class="title-style">アルファス式旋盤の特長</p>
<p>当社の旋盤は、長年の技術蓄積により高精度な加工を実現します。</p>
<p>主なメリットは以下の3点です。</p>
<p>1. 誤差0.001mm以下の精度</p>
<p>2. 24時間連続稼働に対応</p>
<p>3. 独自の冷却システム搭載</p>この書き方では、どれが「見出し」で、どれが「箇条書き(リスト)」なのか、機械には判別できません。
構造化したマークアップ(機械が文脈を理解できる)
<h2>アルファス式旋盤の特長</h2>
<p>当社の旋盤は、長年の技術蓄積により高精度な加工を実現します。</p>
<p>主なメリットは以下の3点です。</p>
<ul>
<li>誤差0.001mm以下の精度</li>
<li>24時間連続稼働に対応</li>
<li>独自の冷却システム搭載</li>
</ul>このように役割を明確にすることで、検索エンジンやAIは、h2 を見て「この記事の重要なテーマだ」と認識し、ul/li を見て「関連する項目の並びだ」と即座に理解できます。
AI用のプロンプト
AIにコーディングしてもらうときは、工夫が必要です。
プロンプト例
以下の内容を、セマンティックなHTML5でマークアップしてください。
- 情報の優先順位に基づき、適切な見出しタグ(h2, h3など)を使用すること。
- 箇条書きの部分は p タグではなく ul/li タグを使用すること。
- 検索エンジンが情報の親子関係を正しく理解できる構造にすること。
- 装飾のための div は最小限にし、意味のあるタグを選択すること。
このように「構造のルール」をプロンプトに組み込むことで、AIは初めて「情報の骨組み」を意識したコードを生成してくれます。
また、すでにHTMLやCSSの知識がある人にとって、非常にわかりやすいコードになるので、調整も楽になります。
3. 検索エンジンやAIに与える「実利的な優位性」
「見た目が同じなら、順位も変わらないのではないか?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。しかし、2026年現在のWeb環境において、正しいHTML構造を持つサイトには圧倒的な優位性があります。
検索結果での占有面積が変わる
Googleなどの検索エンジンは、正しい HTML 構造を見つけると、それを「強調スニペット」や「リッチリザルト」として検索結果の最上部に表示しやすくなります。 例えば、ul/li で書かれたリストは、検索結果画面でそのまま「箇条書き」として引用されます。p タグだけで書かれたサイトよりも画面を大きく占有できるため、クリック率が劇的に向上します。
AIチャットボットに「選ばれる」情報になる
現在はGoogle SGEやPerplexity、ChatGPTといったAIによる回答生成が主流です。AIはウェブサイトを巡回する際、HTMLの構造を頼りに情報を抽出します。 h2/h3 が適切か、table や ul が正確に使われているか。 構造がバラバラなサイトは、AIが情報の確信を持てないため、回答の引用元から除外されるリスクが高まります。
4. AI生成時代に、なぜ「手書きの知識」が必要か?
ChatGPTなどの生成AIは、爆速でHTMLを書き出します。しかし、AIは「そのサイトが誰に、何を伝えたいか」という文脈までは完璧に理解していません。
AIは往々にして、見た目だけを合わせた「div地獄」のコードを吐き出します。 そのコードが「論理的に正しいか」を瞬時に判断し、添削できる審美眼こそが、これからのエンジニアやクリエイターに求められるスキルです。
| 評価項目 | 構造化されていないサイト | 構造化されたサイト |
|---|---|---|
| 検索エンジンの理解 | 文字の羅列として認識される | 情報の親子関係まで把握される |
| AIチャットへの引用 | 抽出ミスが起きやすい | 正確に引用・回答されやすい |
| アクセシビリティ | 音声読み上げで意味が通じない | 障がい者や高齢者にも正しく伝わる |
| メンテナンス性 | どこが何の情報か判別しにくい | 誰が見ても情報の構成が一目でわかる |
5.マークアップは、情報を正しく届けるための「プロフェッショナルの論理」である
乱暴に並べられた言葉に、タグという名の意味を与えて整理する。 この地道な作業は、情報を届ける相手(ユーザー)や、情報を処理するシステム(検索エンジン・AI)に対する、作り手の誠実さの証明です。
見た目が同じならいい、という妥協を捨て、一行のコードに論理を込める。 その積み重ねが、AIという巨大な知能と対等に渡り合い、企業の価値を正しく世の中に発信するための唯一の道となります。
明日から使える:HTML構造セルフチェックリスト
自社のサイトが「AIや検索エンジンに優しい構造」になっているか、以下の5項目をチェックしてみましょう。
- 見出しタグ(h1〜h6)の順序は、本全体の「章・節・項」のように論理的か?
- 箇条書きを、単なる「・」と改行ではなく、ul/li タグで記述しているか?
- 意味のあるコンテンツの塊を、div ではなく section や article で区切っているか?
- 画像に、その内容を説明する alt 属性(代替テキスト)が具体的に入っているか?
- クリックする要素が、ページ遷移なら a タグ、動作の実行なら button タグと使い分けられているか?
※筆者としては、buttonは忘れがちです…汗